||地域振興研究||    調査のねらいアメリカの主な都市開発の仕組み主な都市開発の事例

アメリカ都市開発事例の研究
1.調査のねらい

 都市開発、都市の再開発においては、地価上昇に依存しない計画を考えることが必要な時代に至っていると思われる。
 また、公共施設の整備等が伴う優良な開発事業では、公民のパートナーシップによる都市(再)開発事業 の推進を図っていく必要があろう。
 こうした状況のなかで、従来から様々な工夫で都市開発、特に都市再開発を手がけてきたアメリカの事例を学ぶことは意義あるものと考えられる。

2.アメリカの主な都市開発の仕組み

1.ライトダウン
 @(旧)ライトダウン
  ・1946年の住宅法が採用した仕組み
  ・地方政府がスラム街などを買収し、所定の基盤整備を行い、民間企業に払い下げるシステムをとった
  ・上記の払い下げが、取得・整備に要する原価より低額の場合→Write Douwn(会計用語で「簿価を切り下げる」などの意)
   注)スラム街であり、都市の中心部といっても地価が高いということはない
      整備費用等の回収は難しく、民間に払い下げる以上、<ライトダウン>にならざるを得ないところがある
 ↓
 ●政府補助制度廃止など→下火に
 ↓
 A新ライトダウン
  ・地方政府が買収し、事業コンペ方式で払い下げる貨物ヤードや埋立地などの遊休地に活用
  ・経済効果、雇用・所得効果、産業振興など政策目的に合致していれば取得価格以下で売却 
   → 新ライトダウン

  〈背景〉−タックス・インクリメント・ファイナンシング(TIF)
   ・「短期的な財政支出は税収増加の効果で回収できる」とする考え方

 Bリース方式
  ・事業採算性が苦しい事業にリース方式を導入(≠払い下げ方式)
  ・通常長期(99年)
  ・低額地代設定、固定資産税の減免なども行われる
  ・オフィスビルの空室には固定資産税の免除も


2.PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)
 @背景
  ・旧ライトダウン方式では事前の地方政府と民間の接触を禁止
  ・地方政府が事業性のない計画案を作成→ライトダウンの不成立
  ↓
 ○諸々の背景から地方政府のデベロッパー化が必要に
  ↓
  ・民間との事前折衝が不可欠に
  ・交渉型の都市(再)開発→PPPとよぶ
 A公共から民間へのインセンティブ

施設整備 ・関連公共施設整備
・付帯駐車場整備
・施設内の公共スペース整備 など
ソフト手法 ・開発権の移転
・空中権の設定
・ゾーニング条例や建築規制の特例許可 など
財政的支援 ・土地のライトダウン
・土地の賃貸
・抵当証券の買い入れ      など

 B主な批判と対応
  ・批判@−過度に民間に譲歩しているのでは
  ・批判A−容積率緩和への市民団体による反対運動
  ・対応例−市議会議決のマスタープランやガイドラインの設定

3.産業導入債(IRB−Industrial Revenue Bonds)
 ・地方政府が債権発行−大規模プロジェクトの資金調達
 ・償還はプロジェクト収入による
 ・利息に対する連邦政府税免除
 ・IRBの活用−@資金貸付、A不動産リース、B長期割賦販売

3.主な都市開発の事例

フェニエルホール・マーケットプレイス
プラザ・パサディナ
タウン・スクウェア
ホートン・プラザ・センター
所在地
ボストン
パサディナ
セントポール
サンディエゴ
特徴 ・ボストン再開発局(BRA)がラウス社と共同で都心部の荒廃した卸売市場を改修
・ショッピングセンターとして再生
・1976、78年オープン
・衰退した都心部で市開発局(PRA)が民間デベロッパーと組んで、都心部で郊外型ショッピングモールを成功させたアメリカ初の事例
・1980年オープン
・都心部空地を、市とミンカンデベロッパー、地元企業グループが共同開発
・1980年オープン
・都心部開発公社(CCDC)とアーネスト・ハーン社がショッピング・センターを主体とする複合施設を共同開発
・1985年オープン
施設構成・規模 ・食料品マーケット、レストラン、オフィス、店舗等 ・地区面積4.5ha
・賃貸商業床5.4ha(2階建)
・デパート2(キーテナント)、店舗120以上、レストラン等
・地区面積1.6ha
・ショッピングモール3層2.8ha
・ホテル16階建、250室
・オフィス2棟、5.6ha
・地下駐車場500台

・地区面積16.8ha
・賃貸商業床8ha(5階建)
・デパート、専門店、レストラン、劇場、映画館、ホテル(450室)、オフィス(2.86ha)、駐車場(2,350台)

民間へのインセンティブ ・BRAが99年間、ラウス社に建物を賃貸 @PRAによる土地のライトダウン
A駐車場建設費と管理費をPRAが負担
B誘致デパートに補助金
@市が土地をクリアランス
A土地のライトダウン
B公共的な施設整備等を分担(店舗への通路など)
@土地のライトダウン
A用途規制・容積率の緩和
B民間による公共施設等の整備
C利益分配
D施設デザインの周辺環境への調和
民間への要求 収益配分 周辺環境との調和 施設デザインへの市の関与
投資規模 4000万ドル 1億1500万ドル 1億ドル 1億7420万ドル
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